和歌と俳句

久保田万太郎

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冬の雨磐梯みせずふりにけり

くもり来て酉の夜のありあたゝかに

初酉のつぶるゝ雨となりにけり

三の酉つぶるる雨となりけり

山茶花やみぞれまじりし雨の中

憲政の常道おもふ小春かな

櫻落葉櫻のふとき幹ならび

柊の葉垂りひかる時雨かな

したゝかに音のそひきし時雨かな

毛氈の朱ヶうばひたるしぐれかな

短日やうすく日あたる一ところ

沼遠くひかり来りし枯野かな

何もかも曇つてしまひ都鳥

みやこどりせんべい買ひて都鳥

うづみ火によせしおもひのもゆるかな

中庭の霜除すみしみぞれかな

とび石のはやばやぬれし霙かな

目かくしの高き塀にて冬至かな

はんだいの箍こそみがけ年の暮

ゆく年のひかりそめたる星仰ぐ

山茶花のあはれうたへる軍歌かな

しらじらと夜のあけてくる落葉かな

紙風船美し落葉うつくしく

落葉焚く煙の中の夫婦かな

暖房やきのふの花のいと赤く