和歌と俳句

久保田万太郎

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日向ぼつこ日向がいやになりにけり

霜柱ことに生簀のほとりかな

とりわけて赤土みちのしもばしら

霜柱しらさぎ空に群るゝなり

行儀よく脱ぎしスリッパ冬の雨

松ばやしぬけねばならず冬の月

砂みちのすこし上りや冬の月

海の日のありありしづむ冬至かな

松風の空にあまりし冬至かな

波しろき海の極月来りけり

大年の空の日に刻賭けにけり

掃きだしたあとまだしめずけさの冬

柴垣を透く日も冬に入りにけり

冬に入る月あきらかや松の上

冬来るや平八郎の鯉の圖に

山茶花の散りしく木の間くらきかな

石蕗咲けりけさしぐれたるあときえず

一生に二度と来ぬ日の小春かな

来ては去るその日その日よ返り花

冬紅葉濃き日たゝへてしづかなり

茶室の戸けさまだあかず冬紅葉

黄せきれい濃き黄を投ぐるしぐれかな

しぐるゝやにはかにさして洋傘の朱ヶ

しぐるゝやみるからあまき鹿子餅

一ト木立和田塚くらきしぐれかな