和歌と俳句

三橋鷹女

天翔る我をゆめみつつ冬に入る

冬来るトワレに水の白く湧き

冬日の中父に似し子をさびしみゐる

寒波来る少年の身丈母を越え

おもひでの瞳に枯木立ありて来ぬ

寒木に耳あてて何を聴かうとする

林枯れ白雲われを脅す

寒林の陽にちちははの貌をゑがき

雲とほき冬木の幹をゆさぶれり

飴ねぶり大き冬日を背に負ふも

寒林を来てかなしみのいつかなし

厳冬の燈を身ほとりにして書かず

あまきもの欲れり寒夜の燈に疲れ

過ぎしかの日を瞼にし初冬なり

吾が侘し彼の冬原の羊より

冬来たる眼みひらきて思ふこと

冬来たるあはれ真青き西しがし

常ならぬ世にありこれの松飾る

鷹さびし真澄みの天に尾翼を張り

寒雷を聴けり骨肉一つ間に

ひとものと松恋ひをれば来ぬ

石蕗真つ黄一茎を剪り壺に挿す

寒林に在り寒木の如く佇ち

一枝に花一つきり冬椿