和歌と俳句

三橋鷹女

冬鵙の来ぬ日は黐も悲しめり

黐の実がうまくて啼きぬ冬の鵙

冬鵙は孤りの我を置き去れり

焚火する孤りの影をたきしろに

みみづくが両眼抜きに来る刻か

白骨の手足が戦ぐ落葉季

冬椿天地無情にありにけり

枇杷が咲く金の指輪の指細り

銀紙もて鴉を折り誕生日

鷹老いぬ夜明は常に頭上より

石円し石に腰掛け懐手

枯蔓は焼くべし焼いてしまふべし

夫なしに似てうつくしや狐火は

水仙も紅梅も供華母の手に

鴨翔たばわれ白髪の媼とならむ

吾が影が居て寒鮒を濁らしむ

急ぎ来て雪は蔽へり死の鮒を

氷らんとしては泥沼泥の沼

寒雁か貧厨に錆び易きもの

凍鶴の真顔は真顔もて愛す

雪中に釘打つはわが胸に打つ

葉牡丹の渦のまんなか我が一生

落葉 落葉落葉 臥床の中にも降る

蔦枯れて一身がんじがらみなり

十方にこがらし女身錐揉に