冬鵙の来ぬ日は黐も悲しめり
黐の実がうまくて啼きぬ冬の鵙
冬鵙は孤りの我を置き去れり
焚火する孤りの影をたきしろに
みみづくが両眼抜きに来る刻か
白骨の手足が戦ぐ落葉季
冬椿天地無情にありにけり
枇杷が咲く金の指輪の指細り
銀紙もて鴉を折り誕生日
鷹老いぬ夜明は常に頭上より
石円し石に腰掛け懐手
枯蔓は焼くべし焼いてしまふべし
夫なしに似てうつくしや狐火は
水仙も紅梅も供華母の手に
鴨翔たばわれ白髪の媼とならむ
吾が影が居て寒鮒を濁らしむ
急ぎ来て雪は蔽へり死の鮒を
氷らんとしては泥沼泥の沼
寒雁か貧厨に錆び易きもの
凍鶴の真顔は真顔もて愛す
雪中に釘打つはわが胸に打つ
葉牡丹の渦のまんなか我が一生
落葉 落葉落葉 臥床の中にも降る
蔦枯れて一身がんじがらみなり
十方にこがらし女身錐揉に