和歌と俳句

日野草城

19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

夏めくと課長上衣をぬぎにけり

窓帷の白くなりたる五月かな

夕月のたのしく照りて五月かな

清閑や薄暑の庭の石乾く

あぶらとり一枚もらふ薄暑かな

短夜の隣の欠伸きこえけり

湯あがりのどこやら濡れてすずしさ

鼻のあなすずしく睡る女かな

水晶の念珠つめたき大暑かな

あをあをと大暑の草木濡れにけり

わぎもこのはだのつめたき土用かな

夏深き寝くたれ髪を見られけり

薫風や花をはりたる牡丹園

双袂なびきそろへり大南風

さみだれの荷の豌豆の眞青なる

さみだれの水旺んなる水車

さみだれの露おもしろき藜かな

真青な菜屑かがやく梅雨の畦

花滋きかぼちや畠の梅雨かな

大和川さみだれの水流れけり

古傘に受くる卯の花腐しかな

ともしびにみゆるうのはなくたしかな

寝白粉香にたちにけり虎が雨

うつくしきうまいの貌や虎が雨