夏めくと課長上衣をぬぎにけり
窓帷の白くなりたる五月かな
夕月のたのしく照りて五月かな
清閑や薄暑の庭の石乾く
あぶらとり一枚もらふ薄暑かな
短夜の隣の欠伸きこえけり
湯あがりのどこやら濡れてすずしさよ
鼻のあなすずしく睡る女かな
水晶の念珠つめたき大暑かな
あをあをと大暑の草木濡れにけり
わぎもこのはだのつめたき土用かな
夏深き寝くたれ髪を見られけり
薫風や花をはりたる牡丹園
双袂なびきそろへり大南風
さみだれの荷の豌豆の眞青なる
さみだれの水旺んなる水車
さみだれの露おもしろき藜かな
真青な菜屑かがやく梅雨の畦
花滋きかぼちや畠の梅雨かな
大和川さみだれの水流れけり
古傘に受くる卯の花腐しかな
ともしびにみゆるうのはなくたしかな
寝白粉香にたちにけり虎が雨
うつくしきうまいの貌や虎が雨