和歌と俳句

夏蜜柑

夏蜜柑剥くや明眸しばたたき 草城

しみじみと溶くる砂糖や夏蜜柑 草城

夏蜜柑ぐいとむかれて匂ひけり 草城

夏蜜柑骸となりて匂ひけり 草城

ころびたる児に遠ころげ夏蜜柑

夏蜜柑むきたり爪をぬらしたり 石鼎

夏蜜柑皮むきたてつ白妙に 石鼎

夏蜜柑力こめてるむきやうや 石鼎

夫に手を見られてむける夏みかん 波津女

婚約の頃も酸かりき夏みかん 波津女

夏蜜柑いづこも遠く思はるる 耕衣

旅ゆきたし港内に浮く夏蜜柑 誓子

渚寄りに海の掌濁れり夏蜜柑 耕衣

夏蜜柑地上に落ちて春夫の国 誓子

夏柑やどつと笑ひて創痛む 波郷

大夏柑むさぼりし息をつぎにけり 波郷

来し方に戻らんと在り夏蜜柑 耕衣

夏蜜柑をみなは海にかかづらふ 静塔