燈籠の見えぬ芝生や夏座敷
一つ木に三部屋面して夏座敷
いと小さきつつじが見ゆれ夏座敷
神前に誰れが用ふる白団扇
幼より憂ひしる子の団扇かな
パラソルを松葉牡丹に干しつらね
溽暑たへず黙してあれば涼や来む
植ゑし梅の幹すれずれに端居かな
楽しみに水撒く人や庭の隅
打つ水の花いまだなる藍におよぶ
打水に濡れにぞぬるる木賊かな
打水にはじめてきこゆ松小蝉
黒髪を藻のごと湛へ洗い居り
髪洗ふや白き腕玉なして
髪洗ふうなじに見えし女かな
背に肩にちらして干しぬ洗髪
昼は日影夜は月影に髪拭き干す
髪洗ふ人が見せ居る膝小ぼし
洗ひ髪紙もて結へ神仕
夏蜜柑むきたり爪をぬらしたり
紅白の松葉牡丹に母をおもふ
黄色なる松葉牡丹の大きかり
昼寝さめて花袋などさがしけり
饐飯をかきたて干せる天日かな
暁涼の蝉に風見ゆ梢かな
青空へ消ゆ虹の尾や秋ちかみ