和歌と俳句

原 石鼎

57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68

松が枝の中にも枝や若楓

葉のふちの紅らみ垂れし若楓

鉄橋の人青蘆を見てゐたり

古庭やただ二株の花の王

雨の外をタイヤの音や牡丹

牡丹植うる地なき狭庭の牡丹かな

深見草襞の底より濃紫

余花ちりて何やらゆかし門戻り

若葉より褪せ散る花を掃きにけり

一もとの余花をつつみて山若葉

近よりて日空に余花を見上げけり

見かへりし若葉の花でありにけり

石段に余花ちりたまるところかな

間おき散る余花のはなびら日のうちに

花びらの谷こゆるかに余花の風

吹かれ入りし花びらなほも余花の風に

青む葉を漏る花びらやあせて日に

松蔭へ自動車入れて菖蒲園

紅白に巻きし柱や菖蒲園

ゆきずりの人ゆかしさや菖蒲園

その中に黒き菖蒲や小高園

菖蒲田の菖蒲をのぼる田螺かな

葉を押して曲り咲くあり花菖蒲

檜葉終に新緑あげて来りけり

雨の日も風の若葉や庭木越