初夏やタオルの寝衣昼も着て
初夏のかかるよき日のつづくかな
初夏の大石庭に和みけり
初夏を病むとあらねど枕寄す
地に添うてひろごり垂れて若楓
若楓重り垂るも夕心
牡丹も藤の落花も芝の上
青梅や庫裏の溝板濡れ滲み
青芝に空はあるなり日もすがら
青芝の真中よりとぶ蝶ありぬ
青芝を踏んごみ入るる巌かな
塀潜り閉す時見えぬ夏の芝
一面の青芝なりき塀の内
青芝の蔭より砂や塀の内
夏芝を育つる砂の余り哉
青梅を抱きて居りし蛍哉
青梅にあたつてそれし蛍哉
雹よ雹よさなうちそ広葉全きを
ころげ積む雹に白日わたるかな
雹止んで添ひ吹く風も止みにけり
蚊帳越に本棚の玻璃明易き
逢着す五月の八重子ポスターに
のぞき見し留守の禅間や牡丹より
牡丹闌けて日の子蜥蜴の尾が美事
五歩にして緋牡丹十歩にして蜥蜴青緑に