蕗の葉へ崖のなだれへ黐の花
親鴉子鴉けふも風枝に
親がらす啼く仔の嘴にあはせたり
青蘆に蛍とびそめ光りそめ
霜のごと朝露微塵や青薄
青芒掴んで起ちし負籠かな
宵静や部屋の真中の蚊遣香
大南風桐のやは葉になかれとぞ
黒栄に色ぬれぬるに稚葉かな
黒栄に桐の稚葉のやはやはと
白栄や或夜の雲の霽れぎはに
白栄や月さ緑に夜半の雲
緞帳をたれてピアノや夏至籠
老鶯や日に見えながら谷わたり
老鶯の高音にのみぞわたりけり
紅かがち糸につなぎて納屋の戸に
曇り葉にいつまで置きて夏の露
竹の皮猛き莠と滑蘚に
若竹の地つき撓みて久しけれ
若竹の伸びたる根なる筍よ
青簾大都の夏は来りにけり
青簾内がはの「み」に籠りけり
朝の東夜の西窓や青簾
虹の端森の木立をかくしけり
虹見し瞳カツトグラスの銀匙に
虹こめて鹿おきふしの三笠かな