和歌と俳句

原 石鼎

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懸鉤子を掌うけてつみぬ葉の蔭に

懸鉤子の飴色なるをつまみとり

舌頭の懸鉤子ほのと甘きかな

木戸垣の内に裏白いちごかな

木いちごにほのと深山の香ぞあまし

雹をかしことりと動き消ゆるとき

白玉や蕊のなよびもおそ椿

朝戸出や溝板踏んで鳴るも夏

白は白斑紅は紅斑の緋鯉かな

睡蓮に鰓押しつけし緋鯉かな

日くるれば日ぐれ神守る緋鯉かな

大緋鯉黄がちにはぬる水面かな

白日にたまむしとべる緋鯉かな

すずろあれば森の神守る緋鯉かな

雲影に消えては見ゆる緋鯉かな

こぼし水走る水玉も乾きけり

すてし水土にもしまず乾きけり

白雨ならず何雨ならんけさの庭

本降りに夕立降りは珠のごと

音たてて大地うちきし夕立かな

日傘とは梅の蔭よりさして出る

細き柄の長くて軽くて日唐傘