皸の漸く癒えて蕗茹る
大蕗をどさと下ろしぬ納屋の前
蕗剥ぐや蜘蛛の糸のごと胼の手に
熾んなる黄葉をもつて桐の花
ほづえ穂へこぞりこぞらひ桐の花
咲きそむる片枝よりや桐の花
桐の花碍子の白とまぎれゐる
折り持つて大葉二枚の朴の花
蟇茄子の下より出でにけり
蟇の面へ水とは何ぞとにげにけり
後ろ手に箒横たへ蟇を見る
夕蟇に老衲喝を入れ去れり
けつけろと啼く蛙ゐて明易き
鴉ある日柘榴の花にとまりけり
紫陽花を隠し干衣の滴かな
梅天やにじみ霽れゐる一所
梅天や而して夕陽まよこより
梅天や工場窓より桐広葉
黄色とてかくまで黄なる梅雨の月
ばりばりと干傘たたみ梅雨の果
緞帳を垂れし一間や苔の花
曇れども日の目は見ゆれ苔の花
紅梅に実の一つ来て稚木かな
青梅を搗ち落すいとまありにけり
一握り青梅あるや夜の閾