和歌と俳句

青梅 梅の実

青梅を小皿にもりて機の窓 石鼎

梅の実の二つ三つほど家かげかな 亞浪

押しあひて生つてゐるなる実梅かな 青邨

青梅をちぎりて持ちて湯の道を 草城

あさのみちの、落ちてゐる梅の青い実 山頭火

あほげば青梅、ちよいともぐ 山頭火

朝風の青梅をぬすむ五つ六つ 山頭火

青梅を搗ち落すいとまありにけり 石鼎

一握り青梅あるや夜の閾 石鼎

梅の實の今少しほどふとりゐき 汀女

青梅をふるさとびとよ打落し 万太郎

逆はず黙して梅の実をかぞふ 

青梅や茅葺きかへる雨あがり 犀星

青梅も葉がくれ茜さしにけり 犀星

朝拾ふ青梅の笊ぬれにけり 犀星

炭ついで青梅見ゆる寒さかな 犀星

青梅や築地くえゆく草の中 犀星

簾外のぬれ青梅や梅雨明り 蛇笏

青小梅庭一面に落ちにけり 石鼎

池の雨さむし實梅の枝さしいで 秋櫻子

梅の實の朝ぐもりせるはしづかなり 秋櫻子

竃火の燃えゐて雨の実梅かな 麦南

燕子とぶ機窓の実梅紅さしぬ 麦南

実梅もぐ最も高き枝にのり 久女

苔庭をはくこともあり梅みのる 久女

悔あれば真実梅の実があおい 鷹女

古庫のかたへの実梅を今もげる たかし

枝の梅の五つ六つづつみのり居る 石鼎

青梅の梢に雨のあがりけり 石鼎

書屋あり実梅落つ音筆擱く音 たかし

一稿を稍に書きつぎ実梅落つ たかし

牛の顔大いなるとき青梅落つ 波郷

青梅や案内乞ひたる武者屋敷 占魚

青小梅庭一面に落ちにけり 石鼎

溝またぎ飛び越えもして梅落とす 虚子

青梅をまさぐるつひにひとりにて 誓子

憎まむや子が擲げ入れし青梅を 誓子

青梅に昔の如く歯をあてむ 誓子