和歌と俳句

室生犀星

夏やせと申すべきかや頬あかり

日ざかりや廂にのぼるかぶと虫

硯塀に日盛りの草うつりけり

屋根瓦こけにうもれつ日の盛り

山ざとに風鈴きけばさびしもよ

夕立やかみなり走るとなりぐに

昼深く蟻のぢごくのつづきけり

水鶏なくさとのはやねと申すべし

蝸牛の角のはりきる曇りかな

竹の葉の昼のを淋しめり

蛍くさき人の手をかぐ夕明り

蛍かご入日を移し哀れがる

竹の子の皮むく我もしばらくぞ

さくらごをたたみにならべ梅雨の入り

さくらごは二つつながり居りにけり

さくらごの籠あかるさよ厨口

青梅や茅葺きかへる雨あがり

青梅も葉がくれ茜さしにけり

朝拾ふ青梅の笊ぬれにけり

炭ついで青梅見ゆる寒さかな

青梅や築地くえゆく草の中