鳴神や暗くなりつつ能最中
書屋あり実梅落つ音筆擱く音
一稿を稍に書きつぎ実梅落つ
日覆に針のやうなる洩れ日かな
そくばくの麦の黄もあり多摩河原
昼顔の小さなる輪や広野中
昼顔に認めし紅のさみしさよ
昼顔の花びら斬つて草一葉
昼顔の野にうかみけり梅雨茜
早苗とる一人きりなる音をたて
十薬の花に涼むや楽屋裏
月見草咲くと襷や夕炊ぎ
古絵馬に四萬六千日来る
四萬六千日の門前の蚊火の宿
泳ぎ子や光の中に一人づつ
虹の中を人歩き来る青田かな
泳ぎ子の投げかけ衣葛の上
緑蔭や蝶明らかに人幽か
緑蔭の広きに道の岐れをり
緑蔭の深きに憩ふ久しさよ
薫風にゆだねしさまに水馬
椎の花古葉まじりに散り敷きし
網小屋の戸に昼顔の這入りかけ
山清水ささやくままに聞き入りぬ
打ち水の水の飛び込む大芭蕉