和歌と俳句

清水

子規
松蔭に わきて流るる 眞清水の 藻にすむ魚は 夏をしらじな

其底に木葉年ふる清水哉 子規

絶壁の巌をしぼる清水哉 子規

一口に足らぬ清水の尊さよ 子規

手も足もおしうづむ砂の清水かな 虚子

笈あけて仏を拝む清水かな 子規

忘れても清水むすぶな高野道 子規

尻に敷て笠忘れたる清水哉 漱石

岩の上に金冠のこる清水かな 虚子

旅人の酒冷したる清水かな 虚子

磐石の微動してゐる清水かな 虚子

旅人の立ちよる裏の清水かな 虚子

目洗へば目明らかに清水かな 虚子

音のして草がくれなる清水かな 虚子

心太の叩かれてゐる清水かな 漱石

庭の石動いて見ゆる清水哉 漱石

澄みかかる清水や小き足の跡 漱石

法印の法螺に蟹入る清水かな 漱石

追付て吾まづ掬ぶ清水かな 漱石

汗を吹く風は歯朶より清水かな 漱石

清水ある坊の一つや中尊寺 碧梧桐

雲高く一片かげる清水かな 碧梧桐

山清水魂冷ゆるまで掬びけり 亞浪

真清水の杓の寄附まで山長者 石鼎

日の当る大岩しぼる清水かな 喜舟

大峰を日わたりて幽き清水かな 蛇笏

滲み入りて葎に光る清水かな 龍之介

かがまりて水皺親しき清水かな 草城

口やれば波たゝみ来る清水哉 泊雲

草に置けば笠静かなる清水かな 石鼎

石一つ震ひ沈み行く清水かな 虚子

伏し重つて清水掬ぶや生徒達 しづの女

岩藻皆立ちて揺れゐる清水哉 石鼎

杣が子に日中さみしき清水かな 石鼎

草がくれ麗玉秘めし清水かな 虚子

底の石ほと動き湧く清水かな 虚子