和歌と俳句

原 石鼎

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麦刈のみめよきが我を見上げけり

麦秋の風呂によばれぬいちさきに

麦を搗く軒端に吊りしランプかな

麦埃掃きて灯すや家広し

刈ることもくくることもの一人かな

土塊に高草見たり麻を刈る

衣更し腰のほとりや袴はく

衣更へて一つとなりし行李かな

雨さむみ羽織借りるや杜若

門内に牛繋ぎある若葉かな

若葉見る机に肱の白さかな

汽車も過ぐ月の田の面や蚊帳の外

池にまだ朝日ささぬや蚊帳はづす

夏しめて障子二枚や雪の下

手ふきただ垂れて狭庭やゆきのした

魂蘇れ花橘に時鳥

蓼嗅いで犬いつ失せし水辺かな

五月雨や水にうつれる草の裏

浜草にこぼれて死にしひしこかな

花合歓に目高太るや水ふかし

谷水に太る目高のありにけり

蓮蔭に目高の鰭や朝日さす

緋目高のつづいてゐるよ蓮の茎

蓮の葉を動かす風や目高散る

やや深く目高に交じる小鮒かな