初夏を躍れるごとし藤の幹
牡丹葉に深く花さまたげず鬱々と
牡丹大樹の後ろに廊の柱かな
大籠に引ずりいれし幟かな
幟の絵濃くなりて庵くれにけり
あきらかに雀吹かるる若葉かな
熾んなる日の筍に鶏つるむ
大鋸屑の飛びちるところ苔の花
でで虫の腸さむき月夜かな
壁の蓑に梅の翠来て蝸牛
見つめ居れば明るうなりぬ蝸牛
蝸牛のことも忘れて灯しけり
一つ樹の一つところに雨がへる
日かげるや谷ひろくよぶ雨蛙
桑籠に子来てうれしや実桑畑
桑の実を躍り出し蟻や掌
蓮の葉を蠅飛ぶやまひまひ光り廻る
鮎吐きし荒鵜カツと嘴鳴らしけり
夜に入りて心やすさや鮎をやく
牛のせな僅かに見えぬ青芒
萱わたる翡翠に水やありとしる
かはせみや或は蓮葉高低に
手に払へば蜘蛛あらぬ方へ堕ちて歩む
浜風や砂と争ふ蟻の脚
蟻土に今碧天を烏とぶ