鯉幟槐の幹に大あほち
夏草に土盛りあげて蟻の塔
葉桜に時の太鼓や午の雨
枇杷の核の沁み拡がれる白紙哉
麦仕舞屋根の埃も掃きおとし
垣越しに隣より降る麦埃
縦横に光る木の根や五月闇
口やれば波たゝみ来る清水哉
ぐいと曳けば我田合点や田植牛
牛の中に馬一匹の田植かな
腹掻いて又群を追ふ小鹿かな
ひらひらと樫の落葉や藪表
瀬石皆影曳き流れぬ夏の月
川藪に夕靄下りし青田かな
人歩む二階の音や昼寝覚
青すだれ戞々として太柱
昼顔や蔓とけ結び二三輪
底泥に水縦横や杜若
北嵯峨や藪の間々麦の秋
芭蕉巻葉のぎゆうぎゆうと鳴る夕立哉
蔦幾条枝よりたるゝ泉かな
手に足に逆まく水や簗つくる
一人離れて筏とびゆく納涼かな
清明節の朝しめりよし芋を植う