和歌と俳句

西山泊雲

森てらしすぐる汽車の灯五月闇

裏を見せてさやかや祠の灯

折れ曲りに沿ひて手摺かな

厩口や蚊柱うつる盥水

蚊柱や椎をめぐりて幾くさり

麦埃こぼれつゞけり渚まで

堰石に土器灯す御祓かな

つくばへば石のほとぼる御祓かな

裏木戸やばさとかぶさり雨若葉

大粒の雨に交りて樫落葉

炎天や吹かれ通しの末枝の葉

幣たてゝ一水浄き御祓かな

枇杷の鈴四五枚の葉に立据はり

大雷雨巨樹にはりつき草刈女

折れ曲る手摺に浮き沈み

朝焼雲や土手に並べる草刈女

静かさや浮巣の輪波二ところ

汲水に昼の埃や牡丹園

早乙女に早起の太鼓鳴りにけり

遠のけば沈む橋立夏の海

薫風や島を案内の跣足の子

梅雨晴や暗礁も見えず油凪

顧る間人の岬五月晴

干網に光る鱗や月見草