土くれや芋の芽しかと玉巻ける
山襞にたつ夕靄やすだれ捲く
竃火うつる雨の木屑や蝸牛
蝸牛ののびてひるまず風雨かな
四五枚の葉に立据はり桐の花
椎の花竹にこぼれてさらさらと
隙々を白雲わたる新樹かな
睡蓮に水玉走る夕立かな
棟二つ谷に沈みて青嵐
隣田へ蓑たのまれし田植かな
水口に置く提灯や夜水番
水番を知らで闇ゆく人語かな
竹の葉に蝉とりつきし嵐かな
斑猫の或はとんで芋の葉に
麦刈やほつれ葉鎌でかき揚げて
麦刈や踏めば砕くる土煙
水中の青蘆ほのと五月雨
迅雷や草にひれふす草刈女
薫風や白粉吐きたるなんばの葉
木雫の間遠となりし泉かな
打水や芝垣泳ぐものゝ蔓
夕茜打水土に泡だてる
早苗とる手元に落ちて笠雫
ハンカチや汗一滴の広額
のぼりつめ葉にわかれとぶ蛍かな