和歌と俳句

合歓の花

象潟や雨に西施がねぶの花 芭蕉

羅の中になやめりねぶのはな 支考

くれなゐの暮のすがたや合歓の花 野坡

そのすがた人にうつすやねぶの花 千代女

雨の日やまだきにくれてねむの花 蕪村

誰が魂の梦をさくらん合歓の花 子規

乳牛の角も垂れたり合歓の花 碧梧桐

牧水
初夏の照る日のもとの濃みどりのうら悲しきや合歓の花咲く

百合の山路越え来て合歓の花の里 碧梧桐

牧水
いつ知らず夏も寂しう更けそめぬほのかに合歓の花咲きにけり

牧水
ゆくりなくとあるゆふべに見いでけり合歓のこずゑの一ふさの花

千樫
川隈の椎の木かげの合歓の花にほひさゆらぐ上げ潮の風に

千樫
たもとほる夕川のべの合歓の花その葉は今はねむれるらしも

千樫
夕風にねむのきの花さゆれつつ待つ間まがなしこころそぞろに

合歓かげに舟のけむりや山中湖 蛇笏