和歌と俳句

合歓の花

花合歓や時よりこまかきものに砂 草田男

合歓の梢砂あがき出て花咲かす 草田男

花合歓のしめりや指のしめり程 草田男

妻遠し合歓咲き船には艪が二本 草田男

合歓老いぬ父この海に吾を抱きし 林火

幼な子の黒き瞳に合歓近づけ 綾子

妙高は雨降るらしも合歓の花 源義

花合歓の下を睡りの覚めず過ぐ 龍太

合歓咲けりふるさと乙女下駄ちさし 三鬼

異国旗の下異国めく合歓咲けり 登四郎

合歓咲くや墓石は村の後知らず 登四郎

花合歓に風も物言ひ突然激し 草田男

合歓散るを見をる我等に僧寄り来 立子

合歓咲いて三鬼きさうな関所跡 不死男

花合歓に夕日旅人はとどまらず 林火

赤飯は見るだけの宴合歓の花 静塔

合歓初花水明りしるき羞ぢらひに 林火

叱らるる細目あけをり合歓の花 楸邨

遠き合歓幾まばたきをしつつ見ゆ 波郷

合歓咲けば妻も病みけり病家族 波郷

合歓暮れて酸素ボムベのトラツク来 波郷

合歓咲いてD51老いぬ羽越線 楸邨

合歓見むと思へど試歩を伸ばし得ず 波郷

高空に咲く合歓碧き蝶誘ふ 悌二郎

合歓咲いて湖に古き津伝へけり 林火

国遠し合歓咲く道の郷に似て 林火

恥かしき顔半分は合歓の花 楸邨

合歓の花紅きは媛の国なるよ 誓子