和歌と俳句

山口誓子

黒揚羽壕の冥界出で来る

蛍火が照らす細かき羽使ひ

蛍火が星の代りに天降り来る

吾を離さず山寺の女郎蜘蛛

蝸牛殻新しく死新し

緑蔭に地蔵児を抱く吾も入る

合歓の花紅きは媛の国なるよ

今年竹みな頭を垂れて伏し拝む

蓮の葉が青田に立てり大師の国

早苗挿す一本づつに願籠め

草茂る古城は隆起珊瑚礁

露座仏の膝も青苔青世界

盛綱の駒踏みし海刈田なる

葉月潮伊雑の宮をさしてゆく

鳥威す金銀金は火に見ゆる

送り火の大を丹波の国へ向け

大文字が生身の魂の吾へ向く

緑金の虫火の山の湯に死せり

五輪塔稲田に地水火風空

頭を垂るる前に芒は穂を立たす

噴火山芒は紅き穂を挙る

火の山の爛れに雪の斑なる

箱根山スケート場の冷地蔵

金色の御堂に芭蕉忌を修す