和歌と俳句

山口誓子

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鳳輩の峰越しを思ふ明治節

子等いまも御井をいただく明治節

過ぎましし海道に立つ明治節

明治節行幸の鼓笛聞ゆかに

思い出づ歴史の中に雪降れり

山川に泳ぎてのちの軍神

軍神と伊勢の青嶺といや継ぎに

冬寂びてなほ青谷ぞ荒御魂

書を移していまは落葉す林崎

冬川の合へば青淵畏きかも

青淵の冬動けるに漱ぐ

黒土にまぎるるばかり濃し

の尾さきさばける下通る

紫蘇の汁なほ点々と陰に入る

紅あかく海のほとりに梅を干す

干梅の上来る酸の風絶えず

冷し馬海に鼻筋白く立つ

冷し馬たてがみ波をやりすごし

蟋蟀の無明に海のいなびかり

鶏頭の厚き花瓣に日がさせる

亡き父のセルをわが着て日々の

洋傘つきて帰る家路の海しぐれ

球なくて電柱立てり海しぐれ

寒の星みな立つ天の北の壁

の浜照りつつ午を過ぎにけり