和歌と俳句

山口誓子

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美濃の子と貪る美濃の甜瓜

わが厨胡瓜刻みて午に迫る

同じ木の紅蕃茄のみ暮るるなり

剪る蕃茄や露にふつつりと

向日葵や翼下となりて鳴り響む

向日葵の弁に西日の仮借なく

向日葵のやや俯向きに海荒ぶ

いなづまや指のさきもて字を習ふ

秋風に髪蜜なるを誇りとす

行や駅東海に到るべく

夏去りぬ鉄路にすだく虫聞けば

虫の空ふつつり絶えし照空燈

短冊を父とかしづく魂祭

祭提灯消えゐて北にいなびかり

海の村出でていづくへ墓詣

墓参より帰りて海人の褌ひとつ

たらたらと縁に滴るいなびかり

いなびかり集ひにつどふ海の上

読み終へし手紙や秋の蝉遠く

秋草を添へた鬼灯赧然と

老ひしひと残る暑さの中に処す

一すぢのいなづま走る庭の裡

一角を開きては出づいなびかり

晩餐を照らすいなづま峙ちて

盂蘭盆の鬼灯父の日にも挿す

父の忌やつくつく法師鳴きも出て