病む鳫の夜さむに落て旅ね哉 芭蕉
うら声といふにもあらで鴈の声 鬼貫
雁がねの跡に飛ゆくふら烏 鬼貫
大絃はさらすもとひに落る雁 其角
月更て雁は寐言の相手哉 杉風
文にあまる言伝もあり雁のこゑ 也有
一行の鳫や端山に月を印す 蕪村
紀の路にも下りず夜を行く鳫ひとつ 蕪村
雁聞やあら井の関の侍衆 蕪村
我きけばをはり田をさす雁ならし 暁台
雨くらき夜のしら根を鴈わたる 暁台
鴈が啼君が四阿関屋かな 白雄
雨風の夜もわりなしや雁の声 几董
来る雁にはかなきことを聞夜哉 几董
初鳫や目に相手なき海の月 召波
低く飛雁あり扨は水近し 召波
春秋と移る夢路や雁の声 青蘿
羽音さへ聞えて寒し月の雁 青蘿
鴈鳴や旅寝の空の目にうかぶ 一茶
あさぢふや人はくつさめ鴈は鳴 一茶
風吹てそれから鴈の鳴にけり
鴈下りてついと夜に入る小家哉
鴈鳴や窓の蓋する片山家
暮行や厂とけぶりと膝がしら 一茶
夕月に尻つんむけて小田の鴈 一茶
鴈鳴や浅黄に暮るるちちぶ山 一茶
はつ雁も泊るや恋の軽井沢 一茶
良寛
よもすがら寝ざめて聞けば雁がねの天つ雲井を鳴きわたるかな
良寛
今宵しも寝ざめに聞けば天つかり雲居はるかにうちつれて行く
曙覧
妹と寝るとこよ離れて此あさけ鳴て来つらむ初かりの声