和歌と俳句

鬼灯 ほおずき

鬼灯は実も葉もからも紅葉哉 芭蕉

鬼灯や入日をひたす水のもの 素堂

鬼灯や覗て見れば門徒寺 也有

鬼灯や清原の女が生写し 蕪村

鬼灯や物うちかこつ口のうち 太祇

鬼灯の口つきを姉が指南哉 一茶

霧雨や鬼灯残る草の中 龍之介

鬼灯はまことしやかに赤らみぬ 虚子

鬼灯やけふより習ふ道成寺 喜舟

鬼灯やきき分けさときひよわの子 久女

鬼灯や父母へだて病む山家の娘 久女

ほほづきの大しづくする籬かな 蛇笏

鬼灯や相逢ふ初の従妹同志 みどり女

古坪や赤鬼灯のよこたはる 青畝

隠棲や鬼灯熟るる草の中 播水

みちすがら鬼灯ともる垣根かな 青畝

哀れなる虫鬼灯の灯かな 青畝

鬼灯や洗濯物に精を出し 花蓑

陽がとどけば草のなかにてほほづきの赤さ 山頭火

うたたねの唇にある鬼灯かな 鷹女

吾子に購ふ鉢鬼灯のゆれあへり 蛇笏

染め分けて鬼灯は夜のものならず かな女

鬼灯に岸草の刃もやや焦げぬ 蛇笏

少年に鬼灯くるる少女あり 素十

鬼灯は暮れてなほ朱のたしかなり 

鬼灯やいくつ色づく蝉のから 犀星

墓べにも鬼灯はえてからにしき 蛇笏

鬼灯の一枝累々買ひもどる 誓子

鬼灯を畳に直に枝ながら 誓子

鬼灯を活けて白浪増え来る 誓子

鬼灯のなほ朱からむことを期す 誓子

鬼灯のあからむ頃もひと泳ぐ 誓子

鬼灯や野山をわかつかくれざと 万太郎

秋草を添へた鬼灯赧然と 誓子

鬼灯の赤らみもして主ぶり 虚子

かがまれば鬼灯朱し彳てば青空 節子

鬼灯のあからめばやらむ子が三人 節子

鬼灯のつまぐり父母に拠るながし 節子

鬼灯を箱に取り溜め誰にやらむ たかし

童女来て酸漿に朱をふりそそぐ 鷹女

生み月や鬼灯に灯がともり初め 鷹女

何か言へ鬼灯むいて真赤なら 楸邨