和歌と俳句

杉田久女

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しろじろと花びらそりぬ月の

白菊に棟かげ光る月夜かな

咲きほそめて花瓣するどき野菊かな

わが傘の影の中こき野菊かな

梶の葉に墨濃くすりて願ふこと

七夕百句青き紙にぞ書き初むる

七夕竹を病む子の室に横たへぬ

七夕や布団に凭れ紙縒る子

銀河濃し救ひ得たりし子の命

初秋の土ふむ靴のうす埃

まろ寝して熱ある子かな秋の暮

熱下りて蜜柑むく子の機嫌よく

熱の瞳のうるみてあはれ蜜柑吸ふ

苔まろく踏み凹めたる木の実かな

深耶馬の空は瑠璃なり紅葉狩

濃竜胆浸せる渓に櫛梳り

やく松葉くゆらせ山日和

野菊はや咲いて露けし墓参道

墓の前の土に折りさす野菊かな

障子締めて炉辺なつかしむ黍の雨

新蕎麦を打つてもてなす髪鄙び

掘つて来し大俎板の新牛蒡

芋汁や紙すすけたる大障子

三軒の孫の喧嘩や青林檎

鬼灯やきき分けさときひよわの子