菊切るや唇荒れて峯高し 普羅
菊畠や大空へ菊の気騰る 蛇笏
なつかしき薄紅の菊たそがれとなりてわがごと痩せにけるかな 晶子
白菊をここと定めて移しけり 鬼城
白菊に紅さしそむる日数かな 鬼城
老が身の皺手に手折る黄菊かな 鬼城
月蝕をおそれて菊に傘しけり 鬼城
菊剪るや燭燦爛と人にあり 石鼎
提灯に躍り出る影や門の菊 石鼎
剪りとつて灯下に赤し菊二本 石鼎
たそがるる菊の白さや遠き人 龍之介
白菊や匂にもある影日なた 龍之介
花さきぬ昔はてなき水色の世界にわれとありし白菊 晶子
ほそほそと軒端を越えて菊の花の白きが咲けり瀬のそばの家に 牧水
菊剪るや花花に沈みて離れぬ 石鼎
飛簷高く菊の上ッ雲流れけり 橙黄子
しろじろと花びらそりぬ月の菊 久女
白菊に棟かげ光る月夜かな 久女
天心のうす雲菊の気や凝りし 龍之介
白菊は暮秋の雨に腐りけり 龍之介
かき合はす襟美しき風の菊 みどり女
日にかざす指環きらめきし菊の庭 みどり女
大空も思ひ上れる人なども目に置かぬごと白菊の咲く 晶子
菊剪るや提灯もすこしあげよといふ 石鼎
菊の日を浴びて耳透く病婦かな 久女
母留守の菊にそと下りし病後かな 久女
白菊に遊べる月の魍魎 花蓑
乱菊に明るうなりぬ夕づく日 花蓑
雨の菊雫光りて晴れんとす 花蓑
さえざえと今朝咲き盛る白菊の葉かげの土は紫に見ゆ 白秋
ひとりゐはなにかくつろぐ午たけて酒こほしかもこの菊盛り 白秋
山に家をくつつけて菊咲かせてる 放哉
自らの老好もしや菊に立つ 虚子
病よし菊の畑の荒を見る 虚子
暮れ悩む白菊にある旅ごころ 草城
豊の日に酔へるさまなる黄菊かな 草城
紅菊の色なき露をこぼしけり 草城
毟らるる菊芳しき料理かな 普羅