和歌と俳句

ばった はたはた

浜荻を高くとびたるばつたかな 石鼎

浪音の地ひゞきにとぶばつたかな 石鼎

をちかたにきちきちばつたとび交へる 禅寺洞

台風のすぎたる土のばつたかな 禅寺洞

はたはたやわぎもが肩を超えゆけり 誓子

はたはたのをりをり飛べる野のひかり 悌二郎

はたはたのかそけき音の夕まぐれ 悌二郎

はたはたは少女の指にやはらかき 誓子

はたはたをあはれと放つ掌を見たり 誓子

はたはたのあがりて関のさまもなし 楸邨

馳けて来し子のはたはたにふとかまへ 立子

はたはたに影及ぼせば飛びにけり 草田男

はたはたや黍引く肩にとびつゞく 

ハタハタは野を眩しみかとびにけり 鳳作

天翔るハタハタの音を掌にとらな 鳳作

秋天に投げてハタハタ放ちけり 鳳作

ハタハタの溺れてプール夏逝きぬ 鳳作

はたはたや体操のクラス遠くあり 波郷

伏してゐる銃身をとぶきちきちあり 彷徨子

はたはたのとびかひ高く雲遠く 風生

はたはたに微ぶ友が子吾は草に 友二

木場の材にばつた押へぬ君が子は 誓子

土の色土色ばつたとゐるときの 誓子

はたはたや退路絶たれて道初まる 草田男

弥撤の堂露のはたはた越えゆくよ 秋櫻子

出勤の足は地を飛びばつた跳ぶ 三鬼

はたはたに蹴られて風のたなごころ 不死男

はたはたの羽音ひまなし月待てば 秋櫻子

はたはた飛んで他人の視線の前へ行きぬ 草田男

からかさにばつたを入れて長い人生 鷹女

はたはたのとべるはるかに礁富士 風生

鼻蹴つてはたはた谷へ忿怒仏 楸邨

跳ぶばつたひとりの強さ肯ふも 不死男