和歌と俳句

椎の実

丸盆の椎にむかしの音聞む 蕪村

椎拾ふ横河の児のいとま哉 蕪村

椎の実の板屋を走る夜寒哉 暁台

椎の実の落て音せよ檜笠 几董

牛の子よ椎の実蹄にはさまらん 白雄

椎の實や袂の底にいつからぞ 子規

椎の実沢山拾うて来た息をはづませ 碧梧桐

お盆にのせて椎の実出されふるさと 放哉

姉妹椎の実たべて東京の雑誌よんでる 放哉

椎の実や落葉の上に落ちし音 みどり女

椎の実のはすかひに飛ぶ嵐かな 草城

椎の実に鼻はたかれぬひきがへる 草城

わけ入りて孤りがたのし椎拾ふ 久女

椎の実の落つる中なる祭かな 青邨

椎拾ふ一掬の風手のひらに 茅舎

椎の実や日は高らかに峰を渡る 石鼎

日々の椎ためて俵や夜々の庵 石鼎

椎の実を斗るがうれし崩しつゝ 石鼎

夏に二度詣でし宮の椎拾ふ 槐太

宮後や鉄路に椎の実を拾ふ 誓子

椎の実のつぶつぶ神の溝の上 誓子

椎の実の下にて村に道暗む 誓子

椎の樹の旧緑蔭や実を生らし 誓子

椎の実の見えざれど竿うてば落つ 多佳子

椎の実と共に潰れき我一人 耕衣