和歌と俳句

川端茅舎

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肥担ぐ汝等比丘や芋の秋

藪がしら自然薯の蔓たぐりそむ

自然薯の身空ぶるぶる掘られけり

水霜にまつたき芭蕉広葉かな

土砂降りに一枚飛びし芭蕉かな

舵のごとくに濡れし芭蕉かな

明暗を重ねて月の芭蕉かな

一帳羅やぶれてそめたる芭蕉かな

破芭蕉猶数行をのこしけり

金竜のだらりと消えし花火かな

芋の葉の滂沱と露の面かな

尾をひいて芋の露飛ぶ虚空かな

露の玉走りて残す小粒かな

の玉をどりて露を飛越えぬ

微塵忽ち珠となりにけり

椎拾ふ一掬の風手のひらに

夕紅葉我が杖月のかげをひき

蠅一つ良夜の硯舐ぶり居り

ひらひらと月光降りぬ貝割菜

かんばせを日に照らされて墓詣

法師蝉しみじみ耳のうしろかな

秋風に浴衣は藍の濃かりけり

中空を芭蕉葉飛べる野分