肥担ぐ汝等比丘や芋の秋
藪がしら自然薯の蔓たぐりそむ
自然薯の身空ぶるぶる掘られけり
水霜にまつたき芭蕉広葉かな
土砂降りに一枚飛びし芭蕉かな
舵のごとくに濡れし芭蕉かな
明暗を重ねて月の芭蕉かな
一帳羅やぶれてそめたる芭蕉かな
破芭蕉猶数行をのこしけり
金竜のだらりと消えし花火かな
芋の葉の滂沱と露の面かな
尾をひいて芋の露飛ぶ虚空かな
露の玉走りて残す小粒かな
露の玉をどりて露を飛越えぬ
露微塵忽ち珠となりにけり
椎拾ふ一掬の風手のひらに
夕紅葉我が杖月のかげをひき
蠅一つ良夜の硯舐ぶり居り
ひらひらと月光降りぬ貝割菜
かんばせを日に照らされて墓詣
法師蝉しみじみ耳のうしろかな
秋風に浴衣は藍の濃かりけり
中空を芭蕉葉飛べる野分中