露の葉と露の葉と相触れてをり
刀豆も蟷螂も日々のびて行く
白露も土塊もわかず貝割菜
月出でしベンチに露の新聞紙
鵯もおどろき我もおどろきぬ
本門寺野分に太鼓打ちやめず
野分跡暮れ行く富士の鋭さよ
栗の顔目鼻正しく現るる
曼珠沙華真赤で稲荷鮨食べる
虫の音の身に近ければいとほしみ
黄鶺鴒飛ぶ瀬を竹の皮走り
芋畑狼藉と月照りこぼれ
かなかなの大音声や本門寺
自然薯の花清貧とにはあらじ
叢の露の大石息づきぬ
朴を打つ秋雨手裏剣の如く
鵙猛り裂けし生木の匂ひ甘
鉦叩また絶壁を落ちし夢を
金剛の露に蟷螂斧上ぐる
練馬野の月大胆に真つ白に
大銀杏黄はめもあやに月の空
かなかなや芭蕉廓然たる未明
露の盾芭蕉広葉に隠れ栖む