曼珠沙華三界火宅美しき
露の萩魚鱗の如く沈みけり
白桔梗稲妻の尾のみだれざる
秋風裡炎に蔓を又加ふ
鉦叩二つの鉦の揃はざる
月光の膠着し水黝める
嘶けば歯白き露の馬悲し
よよよよと月の光は机下に来ぬ
身をほそめ飛ぶ帰燕あり月のそら
夕空の土星に秋刀魚焼く匂ひ
うすきうすき有明月に鵙高音
東天の紅消え行きて鵙曇り
白露や月の金環かく細り
つゆよりも小さき菊の蕾み初む
一斉に露凝る如く菊蕾む
有明の月下に菊の輝きし
菊日和シャベルや砂利を掻鳴す
菊日和道を放射に環状に
銀翼の光飛び来ぬ菊日和
迎へ火や蜩近き雲割れて
影法師孤の門火焚きにけり
門火消えひとりのかげも消えにける
大露の露の響ける中に立つ
白露やうしろむきなる月見草