和歌と俳句

川端茅舎

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曼珠沙華三界火宅美しき

露の魚鱗の如く沈みけり

白桔梗稲妻の尾のみだれざる

秋風裡炎に蔓を又加ふ

鉦叩二つの鉦の揃はざる

月光の膠着し水黝める

嘶けば歯白き露の馬悲し

よよよよとの光は机下に来ぬ

身をほそめ飛ぶ帰燕あり月のそら

夕空の土星に秋刀魚焼く匂ひ

うすきうすき有明月に高音

東天の紅消え行きて曇り

白露や月の金環かく細り

つゆよりも小さき菊の蕾み初む

一斉に露凝る如く菊蕾む

有明の月下に菊の輝きし

菊日和シャベルや砂利を掻鳴す

菊日和道を放射に環状に

銀翼の光飛び来ぬ菊日和

迎へ火や蜩近き雲割れて

影法師孤の門火焚きにけり

門火消えひとりのかげも消えにける

大露の露の響ける中に立つ

白露やうしろむきなる月見草