蟷螂や虻の碧眼かい抱き
堂々と露の柱の芭蕉かな
りうりうとして逆立つも露の萩
芭蕉葉に夕稲妻の火色かな
粟の穂に韓紅の葉先かな
掌に掬ふ陸稲の垂り穂軽きかな
黄昏れし顔の案山子の袖几帳
がちやがちやや壺より黒き八重葎
赤のままそと林間の日を集め
きのふけふ法師蝉絶え澄む日かな
月光の露打のべし芭蕉かな
いざよひや露の梨子地の青芭蕉
こほろぎの谺かへしの板間かな
湯にひたる背筋にひたと蟲時雨
桔梗に稲妻うすきほむらかな
稲妻や雲の薬袋夕焼けぬ
想念の穴ふかぶかと鉦叩
十六夜の鋒鋩薄き雲間かな
虫の音のひりりと触れし髪膚かな
鉦叩驚破やと聴けど幽かな
背に腹に竃馬とびつく湯殿かな
芭蕉葉や白露絨し日に匂ひ