和歌と俳句

花火

紫陽花の色に咲きたる花火かな 淡路女

深川の五厘渡しと花火かな 万太郎

明眸の見るもの沖の遠花火 龍之介

君が俥暗きをゆけば花火かな 龍之介

ちる花火水動けども静なり 龍之介

夜をひくき火の見やぐらや遠花火 龍之介

町行けば思はぬ空に花火かな 龍之介

秋風に吹かれて消えぬ昼花火 龍之介

揚花火杉の木の間に散らばれり 汀女

秋山に映りて消えし花火かな 久女

牧水
野末なる三島の町の揚花火月夜の空に散りて消ゆなり

空に伸ぶ花火の途の曲りつつ 虚子

あはれさは夜嵐つのる遠花火 石鼎

帝劇へ風船落ちし花火かな 石鼎

遠花火見えて夜深き牧場かな 石鼎

避暑人のへりたる濱の花火かな 虚子

花火やや飽きた空の眺められ 虚子

花火があがる空の方が町だよ 放哉

遅月の出て終りたる花火かな 草城

花火舟櫓音ときめき溯る 草城

閑けさや花火消えたるあとの星 草城

峡空に谺かへすや大花火 野風呂

花火見に神田明神ありにけり 喜舟

夕空にひかりみえきし花火かな 万太郎

荒川の夜空さみしき花火かな 悌二郎

山もとの花火の空をはしるもの 槐太

月代に消え行く仕掛花火かな 普羅

葛飾の花火ときける夜道かな 秋櫻子

すいすいと子供花火や松の間 立子

住吉に住みなす空は花火かな 青畝

月へ花火の星があがつた 山頭火

金竜のだらりと消え花火かな 茅舎

うちあげし花火くづるる軒端かな 青邨

くづれたる花火が垂るる軒端かな 青邨

玉くしげ箱根の山の花火かな 万太郎

避暑の濱稍さびれたる花火かな 虚子

花火あぐこの恋ばかり消さじとて 万太郎

花火上るはじめの音は静かなり 立子

遠花火夜の髪梳きて長崎に 多佳子

長崎の暗き橋ゆき遠花火 多佳子