和歌と俳句

山口青邨

われ萩にかくるればも萩がくれ

句をしるすおぼつかなくも月の下

茶をはこぶ盆をひからせの園

けふはこの谷を刈るべし豊の秋

江戸の東京の月相同じ

秋雨やクッションを抱いて長椅子に

酒飲んでしづかな人や紅葉狩

からかさを背負ひて老の紅葉狩

人それぞれ書を読んでゐる良夜かな

百穂の月魂となる後の月

草市のくさぐさの中の蓮の花

牛は角馬はたてがみ真菰なる

ふんばれる真菰の馬は肢よわし

うちあげし花火くづるる軒端かな

くづれたる花火が垂るる軒端かな

樽前に日は落ちてゆく花野かな

シグナルに咲きそふ山のをみなへし

馬育つ日高の国のをみなへし

漕ぎもどる童の舟に山葡萄

秋高し空より青き南部富士

かなかなや日は沈みゆく防雪林

のたけりて門を横ぎれり

門しめて庭内深く月を賞す

木犀や月明かに匂ひけり