葛の花こぼれて石にとどまれり
美しき稲妻したり与謝の海
秋扇白し露草むらさきに
鯊釣れず水にある日のうつくしく
小坪の灯葉山の灯とて月を待つ
やがて帰る燕に妻のやさしさよ
今宵閑帰る燕に餞すべし
つばくろの帰れば羽織欲しと思ふ
芋虫の太りにけりな露の宿
肩はりて罎見ゆ糸瓜の水取ると
たまりたる糸瓜の水に月させり
みちのくの如く寒しや十三夜
人人を待つ吾れ人を待つ秋の暮
海底のごとくうつくし末枯るる
ここに立つ受難キリスト葡萄摘
アスマンのワインを醸す葡萄摘む
葡萄摘始まり桶ころがして行く
青林檎つぶらにみのる潮風に
虚子句集置く極北の秋草に
いくさ来むただにしづかや秋も更け
わが髪の紅くなりゆく秋ふたとせ