和歌と俳句

秋の草

ことごとに我もしらずよ秋の艸 白雄

秋草の襖にひたとよりそひつ 虚子

秋草の名もなきをわが墓に植ゑよ 虚子

牧水
かなしみに 驕りおごりて つかれ来ぬ 秋草のなかに 身を投ぐるかな

牧水
あざれたる われの昨日の 生活の 眼にこそうつれ 秋草に寝る

晶子
あさましく 心と心 撃ちあへる さまにしづかに なびく秋草

秋草や濡れていろめく籠の中 蛇笏

秋草やふみしだきたる通ひみち 蛇笏

秋草に日日水かへて枕辺に 久女

秋草に影まじはれる大地かな 風生

秋の草全く濡れぬ山の雨 蛇笏

秋草の仏下りや流しけり 青邨

ボート待つあと四五人や秋の草 みどり女

秋草にとられたる手のあたゝかし かな女

秋くさやしばらくは日のさしわたり 万太郎

遠きより晴れ寄る原や秋の草 草城

一廓は市営住宅秋の草 草城