天晴るや蓬々として破芭蕉
木犀の匂かくれぬ日和かな
香を尋めて来て木犀の花ざかり
朝風に大弧描いて一葉かな
乾きたる砂のけうらや桐一葉
一葉散るきのふが千秋楽の劇場の前
椎の実のはすかひに飛ぶ嵐かな
椎の実に鼻はたかれぬひきがへる
庭古りて日にけに落つる木の実かな
今落ちし木の実拾ひぬうすみどり
あひびきに尽きぬ話や木の実降る
持つて寝る母の乳房や木の実雨
青空に熟柿崩るる天気かな
高枝柿夕日まぼしくもぎにけり
渋柿の色艶栄えてあはれなり
渋柿のわりなき艶をながめけり
青ふくべ一つは月にさらされて
遠きより晴れ寄る原や秋の草
一廓は市営住宅秋の草
水筒の水が鳴るなり草の秋
山号を艸山といふ草の秋