日野草城
妻さびて紅の襷や草の花
ままごとの父にされけり草の花
草の花あはれに咲きぬ親遠し
一雨に濡れたる草の紅葉かな
末枯れて草静かなる大地かな
末枯れて芝もなつかし鳥の影
末枯や知足の人の広額
末枯の萩に風出ぬ昼さがり
煩悩を抜く一念や末枯るる
いつ癒ゆる妹がいたづき末枯るる
末枯や詠み棄つ羇旅も両三句
鬼ごとの鬼は寂しや末枯るる
末枯れて叢高き水辺かな
菊咲くやわすれがたみの眉似たる
臼の音籬落の菊にひびきけり
暮れ悩む白菊にある旅情かな
豊の日に酔へるさまなる黄菊かな
白菊や風邪気の妹に濃甘酒
紅菊の色なき露をこぼしけり
星飛んでそぞろに冷ゆる菊の白