立秋のふんどし白き主かな
爽やかになればたのしきいのちかな
木隠りの沼のあをあをと秋の暮
旅人にをちこち灯る秋の暮
青杉に沈める寺の秋の暮
さしわたる朝寒の陽のにごりなし
肌寒やまことに白き菊の花
おとづれの名刺の白き夜寒かな
小倉山秋惜む人にあひにけり
誨淫の書にしたしめり暮の秋
爽籟や空にみなぎる月明り
若宮はからくれなゐの秋日和
わけ入りて山うつくしき秋日和
草の戸はうらおもてなし秋日和
露冷えの灯の更けてゐる軒端かな
月落ちて露の匂へる木の間かな
行人の顔あきらかや露の秋
蕭々と天の川より風来る
銀漢やごとりごとりと牛車
わが思念月光となり太虚に満つ
妹恋へば夜半のつきかげ空にみつ
月さして槇の白露のあらはるゝ