和歌と俳句

日野草城

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茸山の麓を通る天気かな

茸山や夫人晴着に襷がけ

雑茸も採れば皆貫く笹の茎

貧厨に松茸を焼く香かな

肉鍋や松茸白く介在す

寂しさに葡萄を握る月夜かな

月さしてむらさき煙る葡萄かな

傾いて月まどかなり葡萄棚

芋の葉の水玉載せて晴れにけり

妹と居て梨剥けば足る恋ごころ

梨剥くやいまだもけむる湯上り手

ぺちやんこの南瓜可笑しくなりにけり

秋なすび小さき実つけて木の如し

夕風に散りさざめける柳かな

起きぬけの冴えぬ面輪や散柳

人しれぬ花いとなめる茗荷かな

咲けりとも人は知らじな花茗荷