日野草城
綿雲の真白き桜紅葉かな
くたぶれて紅葉を仰ぐゆふまぐれ
強き灯の照らすところの紅葉かな
みささぎの楓のしるきもみぢかな
風吹けばさかんに落つる桐一葉
乾かして焚きつけにする桐一葉
ありあけの露のはげしき芭蕉かな
一痕の月あり芭蕉つゆけしや
ひつじ田の畦の景色の彼岸花
持つてゐてこはくなりけりしびとばな
たゝずめばあちこち落つる木の実かな
きちこうのむらさき冴ゆるそばえかな
稲刈つて飛鳥の道のさびしさよ
架稲も橘寺も暮れにけり
栗飯のまつたき栗にめぐりあふ
岡寺の大きな柿を買ひにけり
茸の香ふんぷんとして道険し
青葡萄月光来れば透りけり
うらがれをこゝろに露の照る身かも