和歌と俳句

茸 きのこ 菌

茸狩の足ごしらへや女達 風生

頂上のまことに晴れて茸狩 石鼎

茸狩の茣蓙吹きまくる嵐かな 石鼎

雨雫ためてほうけし茸かな 青邨

菌山に風たつ道の栞かな 蛇笏

茸狩や鳥居をくゞる古き道 橙黄子

大いなる籠の古びや茸莚 橙黄子

茸狩や木の間伝ひに次の山 花蓑

山房にほしたる茸の名を知らず 風生

いろいろの菌ほしたる庵かな 風生

茸狩るといでたつ妻の紺がすり 烏頭子

茸狩の土産そろへある鐘楼かな 爽雨

茸の香ふんぷんとして道険し 草城

大いなる二つの釜の茸飯 播水

鴉はや唖々とゐるなり菌狩 不器男

たれかれの木の間すがたや菌狩 爽雨

かへり見て母の達者や菌山 爽雨

目の下に竹田村あり茸狩 虚子

四阿の柱に生えし茸かな 風生

茸ありぬ大きな歯朶の葉をかむり 立子

よき蕈苔につゝみてもどりけり 石鼎

一と莚茸をさなかに日のあたる かな女

瀬戸うちの帆が見ゆるなり茸狩 

里の子の見せじとかばふ菌籠 風生

竜安寺塀の矢印茸山へ 茅舎

茸山の少し曇れば物淋し 虚子

菌など山幸多き台所 虚子

茸狩やゆんづる張つて月既に しづの女

茸狩りのわらべこだまに憑かれけり 麦南

番犬にいたくおどろき茸売 汀女

生意気にくやしがる子や菌狩 花蓑

わがとりし菌いちいち覚えあり 花蓑

みすずかる信濃をとめに茸問はな 蛇笏

釜炊きの茸飯せめて惜しまばや 友二

今しがた聞きし茸の名は忘れ 占魚

案内の宿に長居や菌狩 虚子

茸山にわかれし兵や雲がくる 蛇笏