和歌と俳句

富安風生

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茸狩の足ごしらへや女達

二本の七夕竹のつれさやぎ

かたはらに竜胆濃ゆき清水かな

新涼の俄に到る草廬かな

さわさわと松風わたる芙蓉かな

うすうすと今日仰がれつ鰯雲

稲妻のかかりて高き鶏頭かな

垣外のよその話も良夜かな

草の戸を立ち出でて見れば渡鳥

秋晴や宇治の大橋横はり

銀閣寺門前の田の案山子かな

粟垂るる修学院の径かな

鉦叩きたたきやめたる虫の声

山房にほしたる の名を知らず

いろいろの菌ほしたる庵かな

提げ来るは柿にはあらず烏瓜

八月の桜落葉を掃けるかな

一ひらの濃ゆき紅葉を手向かな

うすもみぢ仏の墓をいづれとも

渡り来し橋を真下や紅葉茶屋

狼藉と唐黍をもぎ尽したり

葉鶏頭の門まで来る出水かな

一霜にくだちやんぬ鶏頭花

やいつしか園の径ならず

秋水に林の如き藻草かな

大いなる幹のうしろの霧の海

いくたびも無月の庭に出でにけり

月を見る大切株にかけにけり

沼の東京遠き思ひかな