和歌と俳句

むかご ぬかご

きくの露落て拾へばぬかごかな 芭蕉

うれしさの箕にあまりたるむかご哉 蕪村

汁鍋にゆさぶり落すぬか子哉 一茶

ほろほろとぬかごこぼるる垣根哉 子規

手一合零余子貰ふや秋の風 龍之介

黄葉して隠れ現る零余子哉 虚子

零余子蔓流るる如くかかりをり 虚子

零余子蔓滝の如くに懸りけり 虚子

むかごこぼれて鶏肥えぬ草の宿 鬼城

野分あとの腹あたためむぬかご汁 石鼎

小さき葉にかくれて一つぬかごかな 石鼎

蔵かべに這ひ上りたるぬかごかな 石鼎

零餘子もぐ笠紐ながき風情かな 蛇笏

音のして夜風のこぼす零余子かな 蛇笏

寂しくばたらふく食しねむかご飯 草城

みがかれて櫃の古さよむかご飯 久女

蔓起せばむかごこぼれゐし湿り土 久女

むかごもぐまれの閑居を訪はれまじ 久女

瓢箪に先きだち落つる零餘子かな 蛇笏

露膨れむすびこぼるる零余子かな 青畝

ぬかご拾ふ子よ父の事知る知らず かな女

拾ひたむ庵の零余子や昨日今日 淡路女

笊のそこにすこしたまれる零余子かな 風生

四阿にとりためありし零余子かな 風生

一本の矢竹にからむ零余子かな 青邨

音のして夜風のこぼす零餘子かな 蛇笏

蔓曳けばたばしり落つるぬかごかな 淡路女

門あるき零余子とる子の二三人 

零餘子おつ土の香日々にひそまりぬ 蛇笏

竹藪に纏ふ零余子のやや黄ばみ たかし

山路を遮る零余子黄葉かな たかし

竹山を零余子黄葉の裾どりし たかし

八千草のあさきにひろふ零余子かな 青畝

雨傘のこぼるる垣のむかごかな 犀星

白秋
病み臥す人が眼うつす外の庭に零余子そよぎてげに外目なり

土屋文明
ゆくりなく延びし垣根の藷蔓に零余子ふとりて目につく今は

王塚を訪ねてこぼす零余子かな 青畝