和歌と俳句

正岡子規

秋の立つ朝や種竹を庵の客

やや寒みちりけ打たする温泉哉

やや寒み朝顔の花小くなる

ひやひやと朝日さしけり松の中

肌寒や湯ぬるうして人こぞる

夜を寒み俳書の山の中に坐す

灯ともして秋の夕を淋しがる

山門をぎいと鎖すや秋の暮

長き夜や千年の後を考へる

長き夜や孔明死する三国志

椎の樹に月傾きて夜ぞ長き

いのちありて今年のも涙かな

枕にす俳句分類の秋の集

月蝕の話などして星の妻

十年の硯洗ふこともなかりけり

両国の花火見て居る上野哉

案山子にも劣りし人の行へかな

説教にいかでやもめのかな

打ちやみつ打ちつに恨あり

酒のあらたならんよりは蕎麦のあらたなれ

北国の庇は長し天の川

庭十歩秋風吹かぬ隈もなし

銀杏の青葉吹き散る野分

野分して上野の鳶の庭に来る

野分の夜書読む心定まらず