落水浮草咲いて流れけり
夕焼のはたと消えけり秋の川
秋川に釣して亀を獲たりけり
川澄んで後ろさがりに鮎落つる
落鮎に水摩つて行く投網かな
小鳥この頃音もさせずに来て居りぬ
鵙鳴くや大百姓の門構
鶉鳴く葎の宿のしるべかな
鶉鳴き鳩鳴き雨となりにけり
鴫立つて我れ来し方へ飛びにけり
椋鳥や草の戸を越す朝嵐
せきれいや水裂けて飛ぶ石の上
梨畑や二つかけたる虎鋏
柿売つて何かうふ尼の身そらかな
柿秋や追へどすぐ来る寺烏
杉の実や鎖にすがるお石段
白菊をここと定めて移しけり
白菊に紅さしそむる日数かな
老が身の皺手に手折る黄菊かな
月蝕をおそれて菊に傘しけり
後の月に明るうなりぬ八重葎
後の月に破れて芋の広葉かな
橋の上に猫ゐて淋し後の月